IMA コラム
都邏夢・トラム
都市間の高速鉄道に比べ、都市内鉄道(トラム)は速度も緩やかで歩行者にも優しく、 街とよく調和する乗り物です。古くは馬車鉄道の流れを汲んでおり、 また規格さえ合えば車両の輸入なども可能で様々なタイプやカラーの車両が 街を行き交うことは稀でありません。 ここでは街の景観に溶け込んでいるいくつかのトラムを紹介します。 まず冒頭に紹介する2枚はドイツの古都ハノーバー(上)と首都ベルリン(下)の |
我が国の例としては長崎と広島。いずれも大都市ながら個性的な二つの都市のトラムを紹介します。
長崎の市電は均一料金で停留所は「電停(デンテイ)」といい、例えば江戸時代唯一の海外窓口となった出島は
「出島電停」と呼ばれています。
広島ではJR広島駅を中心に「広電(ヒロデン)」網が整備され、全国各地で活躍した様々な色や形の車両、
連結トラムや最新型低床車両が運行しています。中には予約制ですが貸切りのレストランカー(TRAIN ROUGE)も活躍しています。
アメリカ西海岸のカリフォルニア州には、サンフランシスコではおなじみのケーブルカーが、
また、退役軍人に人気のあるサンディエゴには都心と旧市街を結ぶ真っ赤な連結トラムが運行しています。
ニュージーランド南島のクライストチャーチにはクラッシックな形式の観光トラムが走り、その一つはレストランカーとなっています。
これらに加え、地域内交通として活躍しているものもあります。
左の例はロスアンゼルスの郊外にある美術館ゲッティ・センター(リチャード・マイヤー設計)に向かう専用トラムで、
麓のバスターミナルと丘の上の白亜の美術館を結ぶ路線として純白の車体が上り下りしています。
右の例はアメリカのハワイ島の大型リゾート施設ヒルトン・バケーション・ワイコロモアにある「モノレール」で
各棟やプール間の交通手段として活躍しています。
米国オレゴン州ポートランドでの試乗記
このように各地で活躍しているトラムですが、全米一住みやすい街とされている
アメリカの西海岸北部のオレゴン州のポートランドでの体験をご紹介します。
ウィラメット川河畔の遊歩道には早朝からランナーが行きかい国際マラソンレースも開催されている健康的な都市です。
全米で唯一周辺の市区町村を含めてメトロ(オレゴン州地域政府)という広域行政組織を作り上げ、
市内に張り巡らされたトラム網(全長84km)で都心と郊外を繋いでいます。
この街で、かつての貨物の車両基地や倉庫群をそのまま商業や事務所として
再生している街「パールディストリクト」を訪れようとマックス(MAX)と呼ばれるトラムに乗る機会がありました。
停留所は写真のようなクラシカルなデザインで歩道の目立つ位置に立っています。
車内の座席は少なく立っている人が多いのですが、自転車置き場もあって市民が気軽に使えるような工夫がされています。
倉庫街まで路線を延長させアクセスを改善した結果、様々な事務所やカフェが生まれることになり、
行き交うトラムはくすんだ色合いの倉庫街にあって鮮やかな色彩で街に彩を与えています。
「パールディストリクト」はこのように交通機関の整備により多くの若者が集まり先端企業やベンチャーの街となった成功例として見学者が絶えません。
これもトラム効果といえると思います。この新しい街の詳細なレポートは次の機会にでも・・・。
なお、表題の「都邏夢」は「都会の中を巡邏していく夢のような乗り物」という意味の私製造語です。
(広報子)