IMA コラム
「春博秋美」 旧東京医学校が建築模型ミュージアムに生まれ変わった話
暖かさにつられて、今年度はじめての街歩きは東京都文京区小石川植物園の一画にある「建築博物誌/アーキテクトニカ」という博物館とした。まず和風庭園からの外観写真をご覧あれ。白亜の基壇部とレンガ色上層部のコントラスト、そして小さな2対のドーマーと中央の時計塔の作るファサードが明治の時代を感じさせる。 建物は「東京医学校」という東大医学部の前身の学舎であり明治9年工部省営繕局により東大本郷キャンパスに建設されたものである。のち昭和44年に当地に移築され小石川分館として現在の姿となっている。 |
入口は裏側に回っていただき、新設された円筒形のコア棟(エレベーターなどを収納)との間に設けられたガラスのエントランスから入ることになる。中は梁あらわしの木造の空間に、医学校時代の鋳鉄製標本ケースをそのまま活用し模型を陳列している。展示されている建築模型はイタリアのヴィラ・ロトンダからアメリカの落水荘まで縮尺別にまとめられている。 階段で2階にあがると東大安田講堂や海外の模型メーカーに作らせたこの建物などの模型もあって、バルコニーからは前面の和風庭園を望むことができる。最後のコーナーには民俗資料が展示してあるのが多少違和感はあるが、建築学徒にはぜひ訪れてほしい博物館であった。なおこの博物館の入館は無料だが、ここから植物園へは一方通行なので入れず、庭園越しの外観を眺めたければ700mほど離れた植物園入口から若干の入園料を払って入るのがおすすめである。 なお、冒頭の「春博秋美」は「シュンパクシュウビ」と読む自家製の四文字熟語である。「春は博物館で知性を磨き、秋は美術館で感性を磨く」という意味が込められている。
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(風琴子)