IMA コラム
「ル・コルビジェ展」によせて
現在六本木ヒルズ森タワーの最上階の美術館で「ル・コルビジェ展」が開催されています。彼は1887年スイスのラ・ショー・ド・フォンに生を受け、今年で120年を迎えそれを記念しての開催です。先日この展覧会を訪れユニテ・ダビタシオンの住戸実大模型などを体験できましたが、たまたま一昨年マルセイユのこの建物を訪れたのでその印象とともに紹介します。
マルセイユの旧港から東へ車で30分ほど走らせると、木々に囲まれて白亜の高層住宅が見えてきます。遠くから白く見えたその姿は、近づくにつれてその壁面内側が様々な色で彩られていることがわかります。車を降りると芝生の上にピロティを持ち上げる巨大な柱が迎えてくれます。1952年の竣工というから55年前の住まいですが、古さまったく感じさせません。337戸1600人が生活し、中には商店もあり、最上階には幼稚園、屋上には野外劇場やプールなどもそろっていてひとつの町といった感じです。
ガイドさんが居住者の一人と話をつけておいてくれて自宅内部の見学できるということで早速エレベーターで上階へ。その女性はすでに子供たちが独立しているので、中をご自由にご覧下さいと各室を案内してくれました。住戸の玄関には「氷の冷蔵庫」も設けられており、コンパクトなキッチンを自慢げに説明してくれました。メゾネット階とは写真のような軽快な階段でつながっています。そして西側の個室からはマルセイユ湾の紺碧の海。行き届いた管理もさることながら、これが55年前のものとは思えないという生き生きとした住宅でした。館内の一部にはホテル機能もついていて「今度来るときは泊まりに来て」と流暢なフランス語で誘ってくれました。
今回の展覧会には、この一住戸2階分の実物大模型が再現されておりそのスケール感を体感できます。窓の外の青い海はありませんが。
9月末まで開催していますのでお出かけになってはいかがでしょうか。
-吟遊人-