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IMA コラム

あさひ山展望公園物語―「街づくり」は「待ちづくり」―

カテゴリ: 建築デザイン 作成日:2011年09月09日(金)

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これは、その時まではその日が歴史に残る衝撃の日になるとは誰も思っていなかった3月11日の朝に、埼玉県飯能市内のローカル紙が『あさひ山展望公園』がまもなく開園すること伝えた記事です。この公園は、飯能市南部で「ビッグヒルズ」と総称されるUR都市機構施行の開発三地区の一つ、南台第二地区の中にありますが、機構の前身の公団時代に関わった公園誕生前史を紹介しましょう。

 南台第二地区が事業準備段階の20年も前の話ですが、地図に「朝日山」という名称と標高が記された地区内に盲腸のように張り出した小さな独立峰のような山があり、その山を残すか否かが議論になっていました。「山をカットして平坦地を増やし使い勝手の良い公園に!」vs[見晴らしの良い山を残して自分の住むまちを眺める丘の公園!] 前者の意見が優勢で、「朝日山」を残すためには、何か『永遠に残る理由づけ』が必要でしたが、地形図を眺めるうちに、入間川を挟んで対峙する天覧山・多峯主山と龍涯山・朝日山―四つの山を廻るハイキングルートを思いつき、当時万博をはじめ数々のビッグイベントを手がけておられた南條道昌さんに相談しました。

 

「ウォーターフロントに対抗してグリーンフロントを打ち上げましょう!」南條さんが都市計画家・建築家・地元の陶芸家等の方々に声をかけ、応援団になってくれた人達と一緒にグリーンフロントまちづくりの進めるための『まちづくり読本』をつくりました。この中に四つの山を廻る『飯能・自然の回廊』構想図をカラーで綴じ込み、「朝日山」を大切なピークの一つに位置づけて計画が持続する仕組みを整え、構想実現の日を待つことになりました。その後バブル経済期も過ぎて人口減少期を迎え、郊外のまちづくりには厳しい時代が続いてビッグヒルズのまちづくりもペースダウン、「朝日山」を残した公園はナカナカ整備に着手出来ず歳月がながれました。
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冒頭の新聞記事のコピーを手渡し『あさひ山展望公園』の完成を知らせてくれたR君は、私とは‘次世代’といえるほど歳が離れていますが、見知らぬ‘旧世代人’の想いを引き継ぎ、彼からは又‘次世代人’の中学生を参加させながら、待ち続けた公園の完成に漕ぎ着けたのです。応援団に名を連ねてくれた人達の内、南條さんはじめ3名の方は鬼籍に入り20年という歳月をあらためて感じます。「まちづくり」は本来息の長い仕事です。今、3.11を境にして「日本人の生活観・価値観」が大きく変わろうとしていますが、息の長いまちづくりが見直され、ビッグヒルズに「グリーンフロントのまちづくり」がよみがえる日がやがて来るかもしれません。
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ところで、朝日山は無事残りましたが『飯能・自然の回廊』づくりの夢は未完のまま継続中です。「龍涯山」と「朝日山」の間はアップダウンが続き、快適なルート設定が難しいのです。飯能市内に住む昔からの山仲間に声をかけ、新登山道のルート探索活動を開始しました。全面開通までもう暫らくお待ちください。

「待てば‘山路’の日和あり」

(囲炉夢)