IMA コラム
しまなみ海道の自転車旅
初秋のしまなみ海道にサイクリングに行ってきました。
この海道は岡山県の尾道から始まり、瀬戸内海をはさんで愛媛県今治へと至る、全長約70kmの道路です。「海の道」というくらいなので、瀬戸内海の島々を結ぶ橋を通っていくのですが、その橋のほとんどに自転車、歩行者専用道路が併設されています。本州から四国まで、自転車で海上を渡って通過することができる、とても珍しいサイクリングコースです。
電車を乗り継いで尾道に到着。自転車は輪行袋に入れることで乗車することができますが、それでもかなりの大きさなので満員電車は避けていきました。尾道は小津安次郎の「東京物語」や大林宣彦の「 尾道三部作」など、映画の名場面として印象的な坂道が登場している街です。坂道を登っていくと、景色が開け、瀬戸内海やそこに浮かぶ島々が眼前に現れてきます。これから向かう島々を確認しつつ、その日は尾道に一泊。
翌日、フェリーにて向島へ移動すると、いよいよサイクリングの始まりです。コースは自動車道路とは分かれていて、海岸線の交通量の少ない道路を通っていきます。瀬戸内海が静かに横たわっている傍らには、果樹園が広がっていたり、とてものんびりした雰囲気でした。
そんな感じで進んでいくと、最初の橋が見えてきます。海抜高度ぎりぎりの海岸線を通ってきているので、山腹を結ぶ橋はものすごい高さに見えます。これを自転車で登っていくのかと思うと、気が滅入ってしまいますが、サイクリングコースは自転車に合わせた緩い勾配でできているので、思ったより苦にはなりません。そして橋に到着。真下は海、全方位に開けた橋からの眺望はとても素晴らしいものでした。
その後、因島、生口島、大三島、伯方島、大島と、合計6つの島々を通過していきます。
島はそれぞれ固有歴史や名産品があったりするので、自転車を漕いでいても飽きませんし、降りて立寄りたくなるスポットもたくさんあります。因みに、因島は中世に活躍した海賊衆である「村上水軍」の本拠地で、伯方(はかた)島はTVのCMで有名な「伯方の塩」の産地です。つり橋のデザインがそれぞれ異なるのも、見所かもしれません。希有なこのコースには、全国から自転車好きの人達が集まってきていて、本格的な装備でサイクリングに挑む人もたくさんいます。全長約70kmのコースは速い人では2、3時間で走破し、日に何往復かしてしまう猛者もいるそうです。しかし、折角都会を離れてサイクリングするのであれば、島々ののんびりした雰囲気を味わうのも悪くはないかと僕は思います。景色の良いところで休憩したり、廃屋の隅にいる野良猫の相手をしたり、ときには自転車を停めてゆっくり進むことができるのも、しまなみ海道の魅力ではないでしょうか。
早朝7:30に出発して、今治に到着したのは宵闇が迫る夕刻でした。