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IMA コラム

Vol.04「二つの研究会」の取り組み

カテゴリ: 都市 作成日:2013年02月08日(金)

2013年のステップアップに向けて

アーバンラボのVol.01・02で紹介した「高台住宅地と結ぶ立体防災拠点の開発研究」と「開発途上国に役立つ日本の二大新都市開発プロジェクトの研究」の昨年末までの活動状況について、今後の方向性・展開見通しに触れながら報告したいと思います。

前者の研究は「復興都市研究会」(事務局;昭和(株))に参画して取り組んでいることをVol.01で紹介しましたが、後者についても(株)URリンケージと(株)入江三宅設計事務所が事務局になって研究会を立ち上げて取り組んでいます。Vol.02に、昨年3月に来日したミャンマーの建設省視察団を「筑波研究学園都市」と「多摩ニュータウン」に案内した際、視察メンバーに渡したパンフレット風の案内資料のタイトルを『二都物語』としたことが書いてありますが、その資料の作成・案内に係わったメンバーを中心に組織した研究会なので「二都物語研究会」という名称にしました。知らない人が聞くとディケンズの「二都物語」を思い浮かべて英国文学研究会かと思うかもしれませんが、ここでの二都は「つくば」と「多摩」、二つの新都市開発プロジェクトのスタートから現在までのあゆみと国土形成に果たした役割を検証しながら、これからのミャンマーの国土づくりに役立つ先導的な開発プロジェクトを提案して、息の長い技術協力をしようと集まった研究会です。
二つの研究会の2012年の最終研究会が、それぞれ12月11日・18日に開催されましたので、今回はその時の議論を中心に報告します。

1.「復興都市研究会」からの報告

NPO法人の設立準備を始めます。

復興都市研究会では、当研究所が提案した「高台住宅地と結ぶ立体防災拠点の開発研究」を、スタート当初から主要テーマの一つとして取り上げ議論を重ねてきています。
Vol.01では、テーマ設定までの流れと復興まちづくりでの位置づけについて解説しています。

2004年に公園の一体的・立体的整備を可能にする立体都市公園制度が制定され、2009年、この制度を「みなとみらい線・元町中華街駅」の駅舎上部に活用した、横浜市の第1号立体都市公園「アメリカ山公園」が開園一体化建物内の自由通路のエレベータ・エスカレータが地域に開放されて山手地区と元町地区の高低差処理に貢献していること評価し、

vol 4 A

vol 4 B

 

C同様のシステムを、急激な高齢化社会を迎えて多くの丘陵地ニュータウンが抱える共通の課題である「まちのバリアフリー化」対策に広く適用すべきとの考えから、D多摩ニュータウンの玄関口では、アメリカ山を参考にしながら、地域開放型施設の継続的な管理・運営と管理コストの低減の両立を図るため、住宅と一体に計画する新たな公民連携のシステム構築を提案。

vol 1 CE東日本大震災の復興計画として、津浪で大きな被害を受けた低地部から高台への集団移転が計画され、移転先用地の選定等が進められる一方、生産・経済活動の再開に向けて低地部の防災インフラ整備も急がれている。

F丘陵地ニュータウン再生として提案した、立体都市公園制度を活用した地域開放型施設を住宅と一体に計画する丘のまちのバリアフリー化システムは、被災地の「丘陵地と低地部が分離することなく、連続性を強化した一体的な防災まちづくりに役立てることが出来るのではないか。


Vol.01の報告は、上記の共通認識に立ってモデルスタディをスタートさせようとするまでで終わっていますが、その後、高台の災害公営住宅建設と連携することを基本として、立体都市公園の一体化建物として高台の「災害公営住宅」と「立体防災拠点施設」を建設し、昇降施設空間を、平常時には地域のバリアフリー化を図るアクセス路として、津波災害時には高台に逃れる緊急避難路として、地域の人たちに開放するシステムの構築について意見交換をしながら、モデルスタディをする候補地さがしを進めました。

研究会のメンバーで、石巻市の復興計画に参画し防災公園計画を担当している萩野氏(?潟Iオバ)から、東日本大震災の大津波から難を逃れて多くの人たちが登った日和山周辺で検討を進めてはとの提案があり、「日和山プロジェクト」として日和山を中心にした復興都市づくりの検討を進めています。モデルプランづくりを当研究所が担当し、12月11日の研究会では、日和山公園周辺の現地調査報告・モデルプラン素案説明をベースに討議しました。
vol 1 D


以前の「多摩ニュータウン再生」での立体都市公園提案では、「愛宕グリーンヒルズ」がある愛宕山が類似空間イメージでしたが、今回の「日和山プロジェクト」の空間イメージは「ガーデンテラス青葉台」(横浜市青葉区1996 入江三宅設計事務所)、日和山の南側斜面地に「階段型集合住宅地」を計画、住宅地の階段・エスカレーター空間を、平常時には地域のバリアフリー化を図るアクセス路として、津波災害時には高台に逃れる緊急避難路として、地域の人たちに開放するシステムの構築、立体都市公園制度を活用した「立体防災拠点施設」と一体的に建設・整備することを提案しています。

  

2012年の最終研究会では「階段型集合住宅地」は災害公営住宅とすべきか、あるいは民間集合住宅とのPPP(公民連携)事業の可能性は如何、地域開放空間の管理方式や公開空地の可能性など多くの意見があり、色々なアドバイスも寄せられています。
2013年は、幅広く情報発信しながら必要な調整を図り、実現に向けての協力体制を構築しようと作戦を練っています。

ミャンマーの国土づくりに役立つ息の長い技術協力を!と、長期的・広域的視点へのコダワリを持って集まった研究会ですが、最初の研究会のゲストメンバーとして最近のミャンマー情勢について情報提供頂いた日本ミャンマー協会の渡邉氏から、ティラワプロジェクトで日本に求められているのはスピードとの話もあり、短期的なメニューと長期的視点をどう組み合わせるかについて意見交換をしながら、「つくば」と「多摩」の二つの新都市開発プロジェクトと国土利用計画のクロス分析をスタートさせました。

 

スタート時の議論、短期的なメニューと長期的視点をどう組み合わせるかについては、長期的・広域的視点から、国土の均衡ある発展を目指した総合的な開発シナリオ(国土形成計画)づくりへの技術協力提案をすること、そしてそのシナリオは先導的なモデルプロジェクトの提案=短期的メニュー付きのシナリオであることが前提。そのような「実践的な国土形成シナリオづくり」に取り組むことが、研究会メンバーの共通認識になってきています。

12月18日の研究会は、最初に11月の国土交通省国土政策局のミャンマー現地調査に同行した大場氏(UED)から各機関でのヒアリング内容について詳細の報告があり、その報告レポートと、「二都総括」作業の取りまとめ役である朝倉氏(STL)が作成した社会経済状況と都市住宅政策との相関を補強した「二都総括年表」をベースに、そこからミャンマーに役立つ技術移転をどう読み取るかについて議論しました。国土政策局のミャンマー現地ヒアリング調査からは、国土形成シナリオづくりの前提になりそうな事柄として、以下のような報告がありました。


○土地は国有だが、利用権という意味で売買の対象とされており、ヤンゴンの地価は急上昇している。開発期限に制限はなく、大財閥がとりあえず所有しているのもあり再開発されずにある。
○軍政時代からの50年計画の残り20年を、UNDP(国連開発計画)がコンサルタントとなり全国を14の地域に分けて行財政的な計画を作成している。他にSEZ(特別経済区)があり、ダウェイはタイ、チャオピーは中国、ティラワは日本で分担開発している。
○新首都としてネーピードを選定した理由は、国土軸的な計画よりも、沿岸部に比べ災害に対して強いという意味もあるとのことである。周辺には官僚向け、工事従事者向け、ビジネスマン向けなど様々なタイプのニュータウンもある。
○都市計画関連法令は1951年の制定で現状にあわず国家空間計画法として更新を試みている。都市建築分野については地震国という理由からも日本の技術を期待している
○日本のJICAによりヤンゴン都市圏開発プログラム形成準備調査中。新規住宅地については、ヤンゴン周辺に7つのニュータウンを建設中、3つのニュータウンが計画中である。

これらの報告を受け、朝倉氏(STL)の労作の「二都総括年表」(図-1)を眺めながら、「実践的な国土形成シナリオづくり」をどう展開するかについて意見交換、シナリオ(国土形成計画)づくりの参考にしようとしている日本の「全国総合開発計画」は、高度経済成長移行期にスタートし社会情勢・経済成長の変動に対応して、「拠点開発構想」(一全総・1962)→「大規模プロジェクト構想」(二全総・1969)→定住圏構想(三全総・1977)→交流ネットワーク構想(四全総・1987)と開発方式を変化させて現在の「21世紀の国土のグランドデザイン」(1998)に至っているが、ミャンマーの国勢・国土構造へ反映を前提に分析・評価し、「国土の均衡ある発展」の目標に重きを置くには、「つかの間の地方の時代」といわれた時の「三全総」の学習からスタートした方がいいのかもしれないとの意見や、日本では戦後の280万戸の住宅不足を受けて大量供給を行った半面、公害等も発生し、後を追う形で公害規制の諸制度が確立した。日本の「全総」システムを技術移転するとすれば、負の歴史も踏まえて掘り下げる必要があるなど様々な意見が出されました。

続いて、先導的プロジェクト事例として考えられる大都市圏ケーススタディー案として、雇用の拡大・急激な人口集中が予想されるヤンゴン都市圏について、勤労者のための計画的な住宅供給政策を特に取り上げたいとの提案がありました。大場氏(UED)の報告にもあった日本JICAで実施中の「ヤンゴン都市圏開発プログラム形成準備調査」に協力し、ヤンゴン中心市街地の再開発による住宅供給とティラワプロジェクトの住宅計画ゾーンとの役割分担・連携を図ろうとするもので、今後の再開発が想定される国・軍の施設跡地の分析に役立てるために作成したヤンゴン市街地図と東京の山手線と重ね合わせた図(図-2)による説明がありました。(宇塚・IMA)

vol 4 G

vol 4 H


vol 4 I

2013年の研究会活動は、ミャンマー全土の南の沿岸部から・中央部・北部の高原・山岳都市まで、先導的プロジェクトを行う実験都市・地方中核都市を7管区・7州全体にバランス良く配置した「拠点都市構想」を描き、大都市圏・中核都市・地方州ごとの先導的なモデルプロジェクトの提案がセットになった「実践的な国土形成シナリオづくり」に着手すること目指しています。日本ミャンマー協会と連携し、UED・URL・IMA3社が中心になってJICAミャンマー関連調査として参加・協力することが出来ないか、関係者との協議を進めることも話し合われました。
2012年の最終研究会は、先導的プロジェクトの事例案を全員が提案することを宿題にして終えており、2013年は、研究会のステップアップの年にしようとメンバー一同静かに燃えています。

 

(都市づくり研究所)